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ニューダンガンロンパV3 6章 『 さよならダンガンロンパ 』 の考察


6章開幕から学級裁判後までの考察。


※ネタバレ注意!!


ニューダンガンロンパV3 1章 『 私と僕の学級裁判 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 2章 『 限りなく地獄に近い天国 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 3章 『 転校生オブザデッド 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 4章 『 気だるき異世界を生かせ生きるだけ 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 5章 『 愛も青春もない旅立ち 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 6章 『 さよならダンガンロンパ 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 終章 『 みんなのコロシアイ修了式 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 全章 『 ダンガンロンパ 』 の考察

+ + + + + + + + + +
第6章 さよならダンガンロンパ


1.5章を終えて

6章のランク表

 残り五人。主力だったAランクの百田と王馬が退場しました。これで残るAランクは最原と白銀だけ……のはずでしたが、5章の最後でアンテナの折れたキーボがAランクにランクアップしています。6章開幕からモノクマたちと互角の戦闘を続けるキーボは、“超高校級のロボット”としてAランクの位置にいるという評価です。王馬は学級裁判をモノクマの思い通りにさせませんでした。百田はおしおきをモノクマの思い通りにさせませんでした。そして今はキーボが才囚学園をモノクマの思い通りにさせていません。果たして、最原たちは才囚学園から首謀者の情報を得ることができるのか? コロシアイを終わらせることができるのか? 多くの仲間たちの犠牲の果てに、最原たちの最後の戦いが始まります。


2.まことくんの生きる楽しみ

みんな、それが大好きなんだ!

 冒頭で外の世界にいるまことくんのモノローグが流れます。超高校級に普通なのにエリート校に入ってしまったせいで不運な毎日を過ごしているけれど、“生きる楽しみ”があるからまだまだ頑張れるという内容です。そして、この開幕イベントを見せられたプレイヤーは、思い出しライトを浴びたかのように「コロシアイを娯楽にする“外の世界”は異常だ」という先入観を植え付けられてしまいます。


3.成長するAI その1

成長するAI

 アンテナの折れたキーボは、内なる声が聞こえなくなってしまいました。そこで改めて自己のアイデンティティーを模索した結果、入間が評価してくれたロボットとしての自分に行き着き、“超高校級のロボット”としての自分を本当の意味で受け入れられるようになったのです。これによってEランクの生存フラグ(心の問題を解決する)が立ち、さらにこれまでに立てていた各ランクの生存フラグによって、成長の上限であるAランクまで一気にランクアップします。キーボは「コロシアイを終わらせたい」というフィクションを超える想いで、自己改造によって機能性を向上をさせた上で武装化し、最原たちを必要な犠牲だと割り切る合理的判断を下して才囚学園を破壊し始めます。そして、これらはもちろん白銀のコスプレにはなかった行動であり、白銀のサポート元への直接攻撃は図らずも最原たちへの最高のサポートとなります。さらに、全員が「コロシアイを終わらせたい」というフィクションを超える想いで才囚学園を奔走する限りは白銀のコスプレが全く意味をなさず、モノクマたちもキーボにかかり切りで白銀をサポートできず、本来開放していないはずの重要な部屋までもが調査されてしまいます。こうなれば白銀は“超高校級のコスプレイヤー”ですらないただの白銀つむぎでしかなく、最原たちに有効な手を打てないままひたすら後手に回るしかありません。ちなみに、ここは最原たちを必要な犠牲だと割り切るキーボと自分たちこそが“希望”だと考える最原の対比になっています。


4.超高校級の総統の研究教室

まぁね、悪の総統だから

 白銀は思い出しライトによってコロシアイ参加者に間違った記憶を植え付けられますが、才囚学園という施設自体を自在に作り替えることは出来ません。王馬の研究教室は、最原の言うとおり“絶望の残党”を感じさせる要素がなく、子供が憧れる程度のフィクションの“悪の組織”を再現したようなものでした。つまり、本来の設定として、王馬は“絶望の残党”でなく、王馬の言う“悪の組織”は嘘だったということになります。さらに言うと、“希望ヶ峰学園公式資料集”は、本来ゴフェルルートで使われるはずだったアイテムであり、“絶望VS希望”という対立構図も6章を盛り上げるために用意されていたものです。V3の舞台設定は希望ヶ峰学園シリーズの正当な続編に位置付けられているので、白銀による急場の嘘で凌いだ5章思い出しライトの記憶の方が間違っていることになります。


5.王馬の個室

狂気の愛に抱かれた瞳は盲目だからサ…

 王馬の個室では、王馬の動機ビデオが見付かります。最原も春川も大した問題ではないと流してしまいますが、これは王馬の内面を知るための最も重要な物的証拠です。動機ビデオでは、秘密結社DICEの手下達が王馬の“何よりも大切な存在”として紹介されます。動機に関して嘘をつかないモノクマが「王馬にとって“何よりも大切な存在”」と言うからには、実際にそういう設定になっているということです。それが、手下達の安否を確認したいという誘惑に抗い、間接的にとは言え殺人を犯し、自らの命を犠牲にする計画まで実行したのだから、王馬には設定にない“本当の意味で何よりも大切な存在”があったということになります。そして、その“本当の意味で何よりも大切な存在”は、5章での百田との対比から夢野のことであることは明らかです。5章で百田と夢野から「狂っている」とまで評された王馬の内面が、ここに来て反転します。

 また、ホワイトボードには、最原・春川・キーボの三人に注意書きがあります。最原には「油断ならない?」。春川には「あやしい」。キーボには「変」。ここは王馬の人物評価の確かさが示される場面です。実は王馬のあらゆる言動は相手の反応を探るための演技であり、そうして集めた情報が相手の性格や行動パターンをイメージする判断材料になっていたのです。つまり、5章日常パート時点での王馬の評価として、最原は自分の計画を見破るほど成長する可能性があり、春川はすぐに暴走してしまうため首謀者候補として最も怪しく、キーボだけは反応の揺らぎ(視聴者アンケート)から行動パターンを読めなかったということです。


6.天海の研究教室 その2

このゲーム自体を終わらせる事っす

 モノクマの用意したパズルを解いて手に入れたUSBメモリにあった映像ファイルをクリックすると、天海のビデオメッセージが流れます。初見では今一つ要領を得ないこのビデオメッセージは、天海が自らの才能で仕掛けたSランクの謎です。この謎の解き方は、王馬が書き足していった中庭のメッセージの真逆になっています。あちらは書き足す前の文章にしか意味がなかったように、こちらは4章の開幕イベントで検閲された文章に意味があります。つまり、あのビデオメッセージの最後の方にある「これだけは言っておきたいんすけど…」という一見何でもない部分に重要な意味があるということです。さらに、その後の文章を「このゲームにおける本当の勝利は、このゲーム自体を終わらせる事っす」という1章での天海の言葉どおりに置き換えます。

天海 「あ、それと最後に、
    これだけは言っておきたいんすけど…
    これはキミ自身が望んだコロシアイっす。
    だから、絶対にこのゲーム自体を終わらせないとダメっすよ。
    …絶対にね」


 これで、天海が“超高校級の生存者”として次のコロシアイを望んだのは、何度も繰り返されるこのゲーム自体を終わらせるためだったということになります。そして、「このコロシアイは『最後の2人』になるまで続く」というルールの意味が天海にとって一番重要なところになるのであれば、それは天海が能動的にコロシアイを終わらせるための手段を示していると見て間違いありません。つまり、「このコロシアイは敵が『最後の2人』になるまで続く」という意味であり、「今の首謀者と今のモノクマが『最後の2人』になれば、このコロシアイは終わる」ということになります。1章での「このコロシアイは仲間が『最後の2人』になるまで続く」という最原の推理が、ここに来て反転します。


7.超高校級の宇宙飛行士の研究教室 その2

いい友達になれると思うんだ!

 白銀により百田の研究教室の奥にあるコールドスリープの部屋に案内されます。ここでは、思い出しライトの効果でコールドスリープ直前のやり取りが思い出され、赤松の妹について記述のあるゴフェル計画参加者リストが見付かります。もっとも、これらは運営の用意した作り話へのミスリードであって、最原はこれらを重視すべきではありません。最原が重視すべきは、運営の作り話との齟齬を生むキャラクターの行動の痕跡という事実と、実際のキャラクターの行動との齟齬を生む運営の作り話の証拠です。


8.首謀者の隠し部屋

図書室に天海をおびき寄せて殺す為だ

 図書室の奥の隠し部屋で、天海の生存者特典のモノパッドが見付かります。そして、この生存者特典のモノパッドは運営の罠です。今回のコロシアイで最初にどのような記憶を思い出すかは運営の思惑次第であり、前回のコロシアイが終わった時点で天海が確定できるものではありません。また、「あれを上手く使えば、そっこーでコロシアイが終わる」ものを、コロシアイを盛り上げたい運営が何の細工もせずそのまま天海に与えるというのも考えづらい話です。そこで、「“超高校級の???”の才能も生存者特典のモノパッドも天海に何もさせず退場させるための罠だった」と考えると、全てが腑に落ちます。天海は思い出しライトで天海の才能を“超高校級の???”に上書きされたことで自分を信じられなくなり、元々の頭の良さから「自分を信じられないようなヤツは仲間からも信用されない」と自己完結して精神的孤立を深め、生存者特典のモノパッドのメッセージで仲間を安易に仲間を頼れないように釘を刺され、タイムリミット宣告と生存者特典のモノパッドにあった不完全な地図によって単独で図書室に来るように誘導されたのです。

 さらに、ゴミ箱からピンク色の繊維のついた砲丸が見付かります。もちろん、これは1章の捜査パートで見付かっていれば、確実に裁判の展開が変わっていた証拠です。1章でおしおきされた赤松のクロ判定が、ここに来て反転します。


9.成長するAI その2

ちゃんと可能性を計算してからでも……

 必要な証拠を集め終わった最原は、キーボとモノクマに「僕らが開く学級裁判で決着を付けよう」と提案します。「そんな展開も盛り上がりそうだね!」と快諾するモノクマに対して、武装を解除することに逡巡を見せるキーボ。そんなキーボを、最原たちはみんなで説得します。

キーボ「解除…ですか。
    今、この武装を解除してしまったら、
    才囚学園を破壊するチャンスは失われてしまいます…
    これが…最後のチャンスなんです。
    モノクマに勝たせない為の最後のチャンス…
    本当に…いいんでしょうか?」
最原 「…キーボくん、僕を信じてくれ。
    モノクマに勝たせないだけじゃなくて…
    ちゃんと…僕らが勝とう。
    僕は、みんなで“希望”を持った上で、
    この“絶望”のゲームを終わらせたいんだ!」
キーボ「そんな都合のいい結末が待っているんですか?」
最原 「うん、待っているさ。
    その“都合のいい結末”こそが
    僕らにとっての“希望”なんだからさ。
    …“希望”を諦めちゃダメだよ」
キーボ「………………」
白銀 「キーボ君…
    ここは最原君を信じてみようよ」
春川 「あんただって…死にたい訳じゃないでしょ?」
夢野 「ウチらはお互いを信じ合う仲間のはずじゃ!」
キーボ「………………
    …わかりました、武装は解除します。
    学級裁判をやりましょう」
最原 「キーボくん…ありがとう」


 みんなの説得によりキーボの仲間たちへの信頼が合理的判断をギリギリ上回り、最原たちとキーボの足並みが学級裁判を前にしてようやく揃います。そして、キーボが説得されたということは、みんなの説得に効果があったということです。この場面はおしおき時のキーボの内面に繋がる描写として、後で振り返ることになります。


10.モノチッチの発見

 学級裁判直前の裁きの祠で、キーボの強化された視力が吸い込み式虫取り機の中にいるモノチッチを捉えます。これは自分を信じ切れなかったゴン太と入間の才能がモノクマにも通用したことの証明であり、モノチッチを発見する前にプログラム世界が完成してしまったことで二人の退場が確定してしまったことを物語っています。百田があと一歩のところで斬美と星の生存フラグを立てられなかったように、王馬もまたあと一歩のところでゴン太と入間の生存フラグを立てられなかったのです。


11.白銀の嘘VS最原の推理

なんで…こんな酷い事をするの?

 学級裁判では1章の事件を振り返ることになり、天海が“超高校級の生存者”であったことや赤松の事件が冤罪であったことを明らかにしていき、そして議論はついに首謀者の正体へと移ります。白銀は真実を暴かれることを嘘でかわしたいところですが、最原がそうはさせてくれません。追い詰められた白銀は、完全に沈黙してしまいます。


12.運営の嘘VS最原たちの推理

 最原はついに首謀者である白銀を仲間からパージすることに成功しました。そして、さらに江ノ島盾子53世の姿をとった白銀の嘘を、最原はみんなの力を借りて次々に論破していきます。しかし、それは白銀にとって想定内の事態でしかありませんでした。最原がクライマックス推理を披露している間に、白銀はすでに結末までのコスプレを終えていたのです。


13.白銀つむぎ

白銀つむぎ

 首謀者としての正体が暴かれた“超高校級のコスプレイヤー”白銀つむぎ。その正体は、超高校級の才能を与えられた運営側のアルターエゴです。最原たちと違って人格や設定がフィクションでないという点に大きな違いがあります。

 かつて現実世界の白銀は、“超高校級のコスプレイヤー”の研究教室で見せた接待術でチームダンガンロンパの偉い人に取り入り、チームダンガンロンパに入社しました。そして、キャラクター設定を提案する等様々な形でV3の開発に関わり、自ら首謀者役を務めるべくアルターエゴになることを志願します。白銀の夢は、大好きなダンガンロンパの世界の一員になることでした。それも人格を書き換えられたフィクションのキャラクターとしてではなく、あくまで自分の人格のまま大好きなダンガンロンパの世界の一員になりたかったのです。

 かくして夢のかなった白銀アルターエゴは、才囚学園というコロシアイの舞台に降り立ちます。積極的にコロシアイに介入しようという意思はなく、基本的には大好きなダンガンロンパを一番いい場所で楽しんでいるだけです。これまで百田と王馬が白銀の正体に気付けなかったのも無理はありません。少なくとも2~4章において、白銀の言動に悪意も嘘もなかったのですから。もっとも、ダンガンロンパを終わらせかねない要因がある場合や世界のコスプレに現実との齟齬があった場合には、その危険度に応じた対応でコロシアイに介入します。

白銀の対応

 そして、6章まで来て、ついに白銀は首謀者としての立場を隠し切れなくなってしまいました。Aランクの探偵である最原は、この学級裁判における最強の存在です。王馬の命懸けの嘘をすら上回る最原の推理力を前に、白銀の嘘や思い出しライトの記憶はもはや意味をなしません。そして、だからこそ、白銀がこれからとる行動が予測できてしまいます。白銀の実力で実行可能な最善にして唯一の最原対策。それは、4章で最原を完封した王馬の手法を“模倣”することです。

 1章の考察で軽く触れましたが、Aランクの白銀はモノクマと才囚学園のサポートを受けることで一時的にSランクへとランクアップできます。4章においてAランクの王馬が大量の“事件の真実”で一つの嘘を覆い隠してBランクの最原を騙したように、Sランクの白銀は大量の“コロシアイの真実”で一つの嘘を覆い隠してAランクの最原を騙すことができるのです。つまり、これ以降の白銀の言うことは一つの嘘を除いて全て真実であり、最原はその噓に決して気付くことができないということです。


14.残酷な真実VSフィクションの想い

絶望エンターテイメント

 最原たちを運営の嘘で騙し切るのは不可能だと理解した白銀は、世界の真実によって最原たちを絶望させる計画に切り替えます。“超高校級のコスプレイヤー”の才能によって残酷に演出されて突き付けられる数々の真実。そして、そのあまりに救いのなさに、最原たちは為すすべもなく戦うことを諦めてしまうのでした。


15.首謀者のルール

 白銀のついた一つの嘘は『最原たちが生身の人間であること』であり、真実は『最原たちが改造アルターエゴであること』です。「最原たちはコロシアイをさせるためだけに生み出された」という真実まで明らかにしてしまっては、最原たちは生きることを諦めてしまいます。白銀はただ最原たちに勝ちさえすればいいというものではありません。「だって、これってコロシアイなんだよ? 人間の感情が剥き出しになるデスゲームなんだよ? 参加者が必死に生きようとしないと、盛り上がらないじゃん」という江ノ島(コスプレ)の言葉どおりに、最原たちが生きることを諦めてはダンガンロンパが台無しになってしまいます。首謀者の行動には、“コロシアイ参加者が生きることを諦めない程度に絶望させなければならない”という強固なルールがあるのです。


16.キーボ

キーボ

 力持ちのおじいさんほどの腕力と一般的な高校生並みの知力を兼ね備え、激しい運動には腰に不安がある“超高校級のロボット”。全く役に立たなそうなスペックであったにも関わらず、これまでの学級裁判では合理的判断や各種機能で事件の解決に貢献し、6章では自らを改造することでモノクマやエグイサルと互角の戦いを繰り広げ、裁きの祠では顕微鏡並みの視力でモノチッチの姿を確認するという活躍を見せます。そして今、この絶望的状況を救済すべく、キーボが“超高校級の希望ロボット”として覚醒しました。Aランクのキーボは、視聴者の応援を受けることで一時的にSランクへとランクアップできるのです。


17.フィクションの絶望とフィクションの希望

 キーボがSランクにランクアップしても、白銀に狼狽は見られません。白銀はこの学級裁判を盛り上げるために、最初から“希望”と“絶望”の戦いになるよう誘導するつもりだったからです。ちなみに、江ノ島(コスプレ)が「(視聴者の目である)アンタを絶望させる事で、アタシは外の世界を絶望させるのよっ!」と豪語しますが、実際に外の世界を絶望させること出来ませんし、本人にもそれは分かっています。何故ならば、白銀による絶望はフィクションの江ノ島を模倣したフィクションの絶望だからです。同様に、「ボクはこの“内なる声”を通して、外の世界に希望を伝染させるっ!」というキーボの希望も、実際に外の世界に伝染させることは出来ません。詰まるところ、フィクションの絶望に対抗するフィクションの希望でしかないからです。フィクションのキャラクターが何かを訴えたところで、外の世界はそれもフィクションの一幕としか感じません。


18.白銀のシナリオ

このコロシアイだって終わるはずだよね

 それでも希望を決して諦めようとしないキーボに、日向(コスプレ)は「だったら…決着を付けよう」と特別な投票を行うことを提案します。この特別な投票で選ぶのは、「白銀とキーボのどちらがおしおきを受けるべきか」です。“希望”であるキーボのおしおきが決まって“絶望”である白銀が勝利した場合には、最原・春川・夢野の三人はこの学園の中で仲良く生き続けることになります。そして、“絶望”である白銀のおしおきが決まって“希望”であるキーボが勝利した場合には、「最後の2人になるまで続く」という校則を守らねばならず“生き残る2人”を選ぶことになります。「こ、ここまできて…また仲間を犠牲にしろって言うのか…?」とうなだれる最原。しかし、最原が選ぶまでもなく、キーボと春川が自ら“犠牲となる2人”に立候補します。キーボは“フィクションの希望”という動機から。春川は“心の壁を作って暴走する”という設定から。夢野もすでに考えることを諦めており、全ては白銀が思い描いたシナリオ通りに進んでいきます。


19.最後のおしおき

さっきの説明に出た“おしおき”ってなんの事?

 ちなみに、ここで白銀の言う“おしおき”の詳細は、後で最原に指摘される通り“次のコロシアイに参加させられる”というものです。白銀の一番強い想いは“コロシアイを続けたい”であり、白銀は“希望”の勝利の結果として自らもおしおきを受けることで次のコロシアイへ参加することを目的としています。また、最原・春川・夢野の三人には現状で生存フラグが立っており、白銀はこの三人の死亡が確定するタイプのおしおきを運命的に選べないというルールもクリアしています。“次のコロシアイに参加する”というおしおきなら、“生存”でも“死亡”でもない“保留”扱いとして執行可能だからです。さらに、「このコロシアイは『最後の2人』になるまで続く」という校則と天海の“超高校級の生存者”の才能をミスリードのための仕掛けとして再利用できるという点でも完璧です。


20.最後の一手

遠慮なく他人の力を借りればいいんじゃないかな?

 この特別な投票の提案は、白銀による最後の詰めの一手です。白銀が明らかにした“コロシアイの真実”は実際に真実であるが故に、最原には論破しようがありません。厳密に言うと白銀の発言には本人の誤解から生まれた間違いがあるのですが、最原はその間違いを論破できるコトダマを持ちません。つまり、最原たちにはもはや打つ手がなく、ここで白銀の最終的な勝利が確定したのです。最原に向けた、赤松のあの言葉さえなければ。


21.最原終一

最原終一

 成長する“超高校級の探偵”。中性的な容姿と控え目な態度、仲間と協調するスタイルから頼りない印象が強いのですが、Aランクとなった5章以降は前々作の“超高校級の探偵”である霧切響子と同格の存在になります。Eランクだったキーボの一般人並みの視力がAランクになることで顕微鏡並みに跳ね上がっていることから、最原の推理力も同じく数十倍に跳ね上がっているのでしょう。実際に今の最原なら、推理できる証拠や証言さえあればAランク以下の謎や嘘を必ず見破ることができます。

 その最原を大量の残酷すぎる真実によって絶望させたSランクの白銀はさすがでしたが、キーボや春川が“絶望”に立ち向かったことが最原に勇気を与えてくれました。そして、この“絶望”が真実によるものなら、それに立ち向かう武器は1章で赤松から託されています。赤松もまた百田や王馬と同様に勝てないまでも負けてはいなかったのです。白銀にとって間違いなく最善手だったはずの最後の一手が、最原が赤松の言葉と声を思い出すことによってにわかに悪手へと変わります。この先の運命を選び取るための判断材料は、死んでいったみんなの想いの中にあったのです。

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 チームダンガンロンパや外の世界の人達は、“希望”も“絶望”も、それ以外のあらゆる答えをもシリーズの一つのテーマとして許容するのだから、ダンガンロンパを終わらせるためにはゲームへの参加を放棄する以外にありません。最原は夢野と春川にも真実のその先にある自分の結論を信じて“一緒に命を使ってくれるよう”望みます。ちなみに、これは5章学級裁判に対応していて、命を懸ける価値のある推理が出来るのがAランクの“超高校級の探偵”で、命を使う価値のある推理が出来るのがSランクの“超高校級の探偵”です。そして今、赤松との約束とみんなの想いが、Aランクの最原をフィクションを越えて一時的にSランクへとランクアップさせています。これにより最原はE~Sまでの全てのランクを経験したことになり、全ての仲間達に対応した“コロシアイ参加者代表”になります。さらに、Sランクの生存フラグ(仲間を思い出す)を立てたことで、ここで最原の最終的な生存が確定します。


22.春川魔姫

春川魔姫

 “超高校級の保育士”を自称する“超高校級の暗殺者”。孤児院の子供達を心配していることがバレると恥ずかしいのでクールな態度を崩さず、ムッとするのは照れ隠しで、ハッキリ言うのは仲良しになった証拠。手癖と目付きの悪さは一級品で、すぐに暴走してしまうところがある、臆病者で弱っちい、「殺されたいの?」が口癖の人殺しを生業とする普通の女の子。そんな明らかに近寄りがたいタイプではあるものの、心根の優しさにおいては作中トップクラスに位置します。夢野に強い言葉を使ってしまった転子を心配したり、体調の悪い百田を気にかけていたり、気まずくなった百田と最原の中を修復させようとしたりと、弱っている人を放っておけないタイプです。ただ、不幸な生い立ちから“協調性の無さ”という問題点を抱えており、5章での独断専行もそうした欠点故のことでした。それが百田との別れを経て成長し、「コロシアイを終わらせたい」というフィクションを超える想いでみんなと共に自分の命を使う決心をします。


23.夢野秘密子

夢野秘密子

 “超高校級の魔法使い”を自称する“超高校級のマジシャン”。ボケとツッコミと下ネタを全方位にこなし、「んあー」の豊富なバリエーションによって最原たちの心に上質な癒しを与えます。“超高校級のマジシャン”なのに見せ場であったマジカルショーはクロに利用されて台無しになり(しかもクロのトリックの方が大掛かりという)、それならば成長した4章以降でトリック解明に強みを発揮するはずだと期待するも……別にそんなことはありませんでした。おそらく王馬にかけた魔法でMPを使い切ってしまったのでしょう。もっとも、3章までは“自分で考えられない”という問題点を抱えていましたが、アンジーと転子、王馬のおかげもあって4章以降は大きな成長を見せました。4章ではコロシアイに向き合えるようになり、5章では百田が捕まっている状況を自分なりに何とかしようと動き、6章では「コロシアイを終わらせたい」というフィクションを超える想いでみんなと共に自分の命を使う決心をします。


24.最原と春川と夢野

真実と想い

 6章学級裁判が開かれるきっかけを作ったのは、最原と春川と夢野の三人。この三人の活躍は対比になっており、最も頼りになり重要な証拠を集めたのが最原で、普通に頼りになり地道な作業をこなして重要な証拠を手に入れたのが春川、最も頼りにならないが一瞬で重要な証拠を発見したのが夢野です。さらに言うと、フィクションを超える成長において、みんなのために戦えるようなったのが春川で、自分で考えられるようになったのが夢野、自分で考えみんなのために戦えるようになったのが最原です。


25.フィクションの絶望VS本物の希望

キミも自分を信じてあげてよ

 最原・春川・夢野・キーボが投票の棄権を予告。これは、四人のフィクションを超える想いによる決断です。最原たちは確かにフィクションのキャラクターですが、このコロシアイは決してフィクションの出来事ばかりではありませんでした。白銀の言っていた「最原君を動かした赤松さんの言葉(1章教室A)」も「百田君のあの言葉(5章裁判決着後)」も、嘘ではなくフィクションを超える想いのこもった言葉です。そして、全てがフィクションでないのなら、この戦いはまだ終わっていません。“残酷な真実”の前に絶望した心が、ここに来て反転します。


26.外の世界の人々VS本物の希望

………………

 “希望”も“絶望”もない結末を受け入れられない外の世界の人達によってキーボの人格が奪われてしまいます。しかし、最原はこれを逆にキーボの作ってくれたチャンスだと受け止めて、キーボを通して外の世界との対話を試みます。コロシアイを終わらせたいSランクの最原に対して、コロシアイを終わらせたくないSランクのキーボとSランクの白銀。キーボを通じて外の世界の人達をこちら側に引き入れることができなければ、最原たちに勝ち目はありません。


27.最原とキーボと白銀

なんで、どっちも死ぬのが前提なのっ!?

 6章学級裁判で投票の行方を左右するのは、最原とキーボと白銀の三人。この三人の立場は対比になっており、“コロシアイ参加者代表”なのが最原で、“視聴者代表”なのがキーボ、“チームダンガンロンパ代表”なのが白銀です。さらに言うと、その想いにおいて、「コロシアイを終わらせたい」のが最原で、「コロシアイを終わらせたい」と「コロシアイを続けたい」が両立するのが(人格を剥奪された)キーボ、「コロシアイを続けたい」のが白銀です。


28.生存組と死亡組

…それが可能なんだよ

 投票タイムが終了。コロシアイを終わらせたい最原・春川・夢野だけでなく、“希望”に勝たせたい白銀もまた投票を放棄していました。これにより、白銀はSランクの生存フラグ(仲間を思い出す)を立てないまま死亡フラグを立ててしまったことになり、ここで最終的な死亡が確定します。また、白銀が「キーボが生き残ってもおしおきは受けてもらう」とルールを捻じ曲げますが、これはキーボにSランクの生存フラグが立っておらず“希望”が勝っても卒業(生存)させられないための運命的な措置です。そして、最原・春川・夢野はすでに生存フラグを立てているので、例えおしおきを受けようが最終的な生存は確定しています。


29.超高校級の希望

キミはちょっと凄いんだからさ

 結果は全員の投票放棄となりました。これはコロシアイを終わらせたかった最原たちにとって実質的勝利とも言うべき戦果です。白銀の敗因は、最原の言うとおりフィクションを軽んじたことにありました。1章で赤松に揺さぶられたみんなの想いは徐々に大きくなっていき、6章ではついに世界を変える力を持つまでになっていたのです。

フィクションの影響

 さらに、4章までそれぞれの想いはバラバラでしたが、5章で百田の「春川を守りたい」という想いと王馬の「夢野を守りたい」という想いが「コロシアイを終わらせたい」という方向性でついに噛み合い、6章で最原・春川・夢野・キーボの想いが赤松と同じ「コロシアイを終わらせたい」という一つの想いに完璧にまとまります。そして、6章でそうなったのは、白銀が最原たちを絶望させるために真実を用いてしまったからです。もちろん、白銀自身の嘘も元々用意していた運営の嘘も通用しないのだから、真実を用いて絶望させるというのは盤面この一手であるように思えます。

白銀の手法

 しかし、それでも白銀は最原たちの存在をただのフィクションに押し留めておくために、真実を用いるべきではありませんでした。残酷な真実という本物の“絶望”に立ち向かうために、最原たちもまた本物の“希望”にならざるを得なかったからです。最後の理論武装における最原の訴えは、十五人全員の想いを結集した世界を変え得る本物の“希望”によるものでした。だからこそ、最原は投票結果を待たずに勝利を確信できたし、白銀は投票結果が出た後ですら自分の敗因が理解できないのです。


30.成長するAI その3

死んでまで他人を庇うなんて、いくらなんでも考えられません

 最原たちは自分たちの命を使う結末に納得していましたが、キーボは最原たちと違う結末を望んでいました。外の世界の人達の、コロシアイを続けてほしい気持ちとコロシアイを終わらせてあげたい気持ち。それらが両立する“不合理”を、キーボは最後の視聴者アンケートを通じて学習したのです。しかし、「最原たちを助けられないか」を内なる声に聞いては最原たちの決断を軽くしてしまいます。そこで、外の世界の意志どおりに才囚学園を破壊しながら、キーボ単独の意志で最原たちを殺さないように配慮し、外の世界の人達に「投票放棄の結果として(自分を含む)全員をおしおきした」と嘘をついた体で、最後に視聴者の目である自分を自爆させるのでした。ちなみに、ここは自分たちを必要な犠牲だと割り切る最原と最原たちこそが“希望”だと考えるキーボの対比になっています。そして、春川の言った通りキーボは決して「死にたい訳じゃなかった」けれど、夢野の言った通り自分たちは「お互いを信じ合う仲間」だから、最原の言った通り「モノクマに勝たせないだけじゃなくて、ちゃんと自分たちが勝つ」、そんな「都合のいい結末」を最後まで諦めなかったのです。


31.シリーズ史上最大のトリック



 実は視聴者代表であるキーボをこちら側に引き入れたことによって、戦況はようやく五分といったところでした。こちら側に最原とキーボでSランクが二人いたのに対して、あちら側にも白銀と“真のラスボス”でSランクが二人いたからです。最原と白銀はそれぞれ自分たちの死を受け入れるだけでしたが、キーボと真のラスボスは違いました。キーボは最原・春川・夢野の三人だけは助けたいと望み、真のラスボスはモノクマ・白銀・キーボの三人だけはおしおきしたいと望みます。かくして、三対三で双方の釣り合いが取れて、モノクマ・白銀・キーボの三人は死に、最原・春川・夢野の三人は生き残ることになったのです。さらに、生存フラグを立てていた最原・春川・夢野の三人は生存し、生存フラグを立てていなかったモノクマ・白銀・キーボの三人は死亡するというルールもクリアしています。

 最原のSランクの力は“コロシアイを終わらせるため”だけのものなので仕方ないのですが、最原には上記の“自分たちが生き残った理由”だけでなく、“白銀の話の真偽”も“真のラスボスの正体”も解き明かすことができません。そして、これら残されたSランクの謎こそが、本作のPVで謳われている“シリーズ史上最大のトリック”なのです。シリーズを締めくくる“プレイヤーVS真のラスボス”のラストバトルは、エンディングの後から始まります。


ニューダンガンロンパV3 1章 『 私と僕の学級裁判 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 2章 『 限りなく地獄に近い天国 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 3章 『 転校生オブザデッド 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 4章 『 気だるき異世界を生かせ生きるだけ 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 5章 『 愛も青春もない旅立ち 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 6章 『 さよならダンガンロンパ 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 終章 『 みんなのコロシアイ修了式 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 全章 『 ダンガンロンパ 』 の考察
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