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ニューダンガンロンパV3 5章 『 愛も青春もない旅立ち 』 の考察


5章開幕から学級裁判後までの考察。


※ネタバレ注意!!


ニューダンガンロンパV3 1章 『 私と僕の学級裁判 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 2章 『 限りなく地獄に近い天国 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 3章 『 転校生オブザデッド 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 4章 『 気だるき異世界を生かせ生きるだけ 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 5章 『 愛も青春もない旅立ち 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 6章 『 さよならダンガンロンパ 』 の考察
ニューダンガンロンパV3 終章 『 みんなのコロシアイ修了式 』 の考察

+ + + + + + + + + +
第5章 愛も青春もない旅立ち


1.4章を終えて


5章のランク表


 残り7人。Dランクのゴン太と入間が退場して、残りのコロシアイ参加者はAランクとEランクだけになってしまいました。キーキャラクターとなるAランクは四人。本質を見抜く百田。嘘つきの王馬。真実を暴く最原。首謀者である白銀。5章では同格でありながら全くタイプの違う四人の活躍が見所になります。


2.今後の方針

 学級裁判から一夜明けて、食堂で今後の方針を話し合います。夢野の“外の世界の真実”への不安に対しては百田が「外の事なんて考えるだけ無駄だろ」とモノクマの罠である可能性を指摘し、「王馬君を早く何とかしないと」という白銀の焦りに対しては最原が「それなら大丈夫」と静観を推奨します。白銀がなおも食い下がったところでモノクマ登場。ご褒美アイテムが渡されることにより、話題が学園の謎にシフトします。ここはいつものやり取りに見えて、三人の才能が輝く場面です。“外の世界の真実”というよく分からないものに対しては百田の勘が正しい答えをつかみ取り、王馬を一刻も早く排除したい白銀の誘導に対しては最原の推理力が不合理な行動を許さず、モノクマのフォローがもう少し遅ければヒートアップした白銀は“首謀者のあぶり出し”という王馬の罠にかかっていたことでしょう。首謀者である白銀はモノクマや才囚学園のバックアップによって他のコロシアイ参加者の上位に位置しますが、それでもそれぞれの得意分野においては最原たちに分があります。三人の才能が嚙み合えば、コロシアイを終わらせられることは決して不可能ではないのです。


3.モノクマとの最終決戦の準備

 まずは百田のターンです。百田は王馬を放置してモノクマとの最終決戦に臨むようみんなに呼びかけます。本質を見抜く百田には、王馬の嘘が通用しないのです。しかし、王馬は、みんなを守るためにも、計画を台無しにされないためにも、百田たちの行動を放置するわけにはいきません。かくして状況の停滞は破られます。百田が動かざるを得なかったのは健康状態の悪化のせいで、あらかじめ百田にウィルスを打ち込んでいた白銀の仕込みが生きました。


4.絶望のデスロード その2

 次は王馬のターンです。百田たちにエレクトハンマーを与えて絶望のデスロードに誘導し、“外の世界の真実”を見せた上で絶望的な嘘をついて行動する意思を挫き、さらにリーダーシップと行動力のある百田をみんなから引き離します。百田が「王馬を放置してモノクマと戦う」と発言してからの二日間で用意したとは思えないほどの完璧な嘘でした。ただ、百田をみんなから引き離したことで、白銀に付け入る隙を与えてしまいます。


5.思い出しライト その4

 さらに白銀のターンです。王馬が百田を拉致してから二日後に、食堂で思い出しライトが見つかります。今回の記憶は、絶望に打ちひしがれていたみんなの心に希望の光を灯すものでした。希望ヶ峰学園と江ノ島盾子、絶望の残党、未来機関、希望VS絶望、自分たちが新しい希望ヶ峰学園の生徒だったこと。思い出しライトを浴びたみんなは、王馬の打倒と百田の救出を決意します。そして、これは春川に王馬を殺害させるための白銀の策略です。5章が始まってからここまで思い出しライトが見つからなかったのは、百田がみんなのリーダーでいる限りは白銀の策略に成功の見込みがないからです。今回の思い出しライトは今までのものと違って明確な悪意によって作られているので、百田の勘がその危険性を絶対に見逃しません。また、白銀が強引に思い出しライトを使ったとしても、百田が春川の暴走を止めるでしょうし、白銀の行動の不自然さに最原が疑念を抱く恐れがあります。ところが、王馬によって百田がみんなから引き離されたためにそうした懸念は払拭され、悪意に満ちた思い出しライトを使うことが可能になりました。白銀は改めてシミュレーションを行うことで、王馬を排除するための嘘を用意したのです。


6.格納庫の下見

 いきなりですが、1章における赤松とのエレベーターでの会話を憶えているでしょうか。

赤松 「あのさ、最原くん。
    さっきの話の続きなんだけどさ…」
最原 「…え?」
赤松 「真実を知るのが怖い気持ちって…
    きっと誰にでもあると思う。
    でも、真実を見つけた人だけが、
    その先の運命を選ぶ事ができるんだよ。
    何が嘘で何が真実かわからないままだと、
    何かを選ぶ事もできないし…
    きっと、自分が選んだ事すらわからないままだと思う。
    だから…怖くても戦わないとダメだよ、
    真実と。
    キミはそれができる人なんだからさ」
最原 「………………」
赤松 「それでも怖い時は…
    遠慮なく他人の力を借りればいいんじゃないかな?
    自分だけじゃなくて、他の人の為だと思うと、
    もう少しだけ力が湧いてくると思うよ?
    …私もそうだったからね。
    コンクールで吐きそうなほど緊張してる時、
    いつも頭に浮かべていたのは…
    私のピアノを聞いて
    笑顔になってくれた人達の事だからさ」
最原 「赤松さん…」
赤松 「じゃあ、行こうか!
    こういう嫌な事はサクッと終わらせちゃおうよ!」

 あの場面は、格納庫での百田との会話に対応しています。

百田 「終一、しばらくは任せたぜ」
最原 「…え?」
百田 「オレがいねー間、
    テメーがみんなを支えてやってくれ。
    特にハルマキは…
    すぐに暴走しちまうところがあるからよ」
最原 「うん…」
百田 「テメーは大した探偵だけどよ、
    でも、きっとそれだけじゃねー。
    テメーなら真実だけじゃなくて、
    その向こうにあるものまで手が届くはずだ。
    それと、忘れんな!
    テメーは1人じゃねーんだ!
    1人で何もかも背負い込むような真似はすんなよ!
    すぐに疲れちまうぞ!
    そういう時こそ、仲間を頼らねーとな!」
最原 (仲間を頼る…か。
    そっか、僕に足りなかったのは…
    僕にできていなかったのは…)
百田 「オレはテメーを信じてる。
    だから、しばらくはテメーに任せたぜ。
    なぁ、終一!」
最原 (百田くん…ありがとう。
    また、その名前で僕を呼んでくれるんだね)

 赤松と百田のどちらもが、死を目前にしながら心配をかけまいと不安を隠し、最原なら真実のその先へ手が届くと本気で信じて、さらに一人で背負い込みすぎないよう心から案じています。ただ、赤松はSランクで百田はAランクなので同じようでも微妙に違っていて、赤松は「仲間のことを頭に浮かべるように」と、百田は「仲間を頼るように」と言っています。仲間を頼ることはともかく、仲間を思い出すことにどのような意味があるのでしょうか。そのヒントは、すでに作中で示されています。

 それはそれとして、死を目前にしてすら最原を心から案じるAランクの百田の想いが“友情”なのだから、Sランクの赤松の想いはやはり“愛情”なのでしょう。最赤…尊いよぉ…。


7.捜査パートのパートナー

 翌朝にみんなで百田を助けに格納庫へ向かったところ、プレス機に潰された死体を発見します。最原にとっても、春川にとっても、白銀にとっても、不可解な状況です。また、これまで死体発見後は必ず誰かと一緒に捜査をしていましたが、今回は一人で捜査をすることになります。


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 実は各章の捜査パートのパートナーは最原の信頼度に対応していて、これまで最原が成長するにしたがって信頼度の下がったパートナーがあてがわれてきました。今回の捜査にパートナーはいませんが、Aランクに成長を遂げた最原にとって何の問題もありません。そして、ここから先は“大した探偵”である最原のターンです。


8.学級裁判での百田 その4

 今回の学級裁判では誰がクロか分からないという(前作5章のような)展開になりますが、シナリオの構造から判断してすでにクロは確定しています。2章以降の学級裁判で最原を成長させるのは、百田の役目だからです。


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 もっとも、最原はすでに上限のAランクまで成長を遂げているので、今回の学級裁判は百田と同格の実力を証明するための戦いということになります。


9.学級裁判での最原

 最原にとって、本来の実力であるAランクになってから初めての学級裁判となります。百田や王馬と同格の実力があることと、二人との明確な方向性の違いが見所です。まず5章学級裁判において春川と夢野がそれぞれ人に言えない真実を抱えていますが、これは2章学級裁判と3章学級裁判に対応しています。真実を隠す仲間に対して、本人の心を動かして話す気にさせるのが百田で、場を誘導することで発言を引き出すのが王馬、推理で真実を暴くのが最原。さらに言うと、みんなとの関係性において、強いリーダーシップで引っ張るのが百田で、嘘をついてコントロールするのが王馬、論理を説いて協調するのが最原。コロシアイを終わらせるために、自分の信じるゴールへ道なき道を突き進むのが百田で、自分の行きたいゴールへ嘘で道を作るのが王馬、正しいゴールへの道を推理で明らかにするのが最原です。

 最原は、まさに百田のアドバイスどおりに成長を遂げました。探偵として高い実力があるだけでなく、一人で背負い込まずに仲間を頼って、真実の向こうにあるものまで手が届く。それがAランクの最原です。5章学級裁判では、自身の実力とみんなの協力によって王馬のトリックの全てを暴き、クロであるはずの百田をも信じて真実の向こうにある真実とは別の結論を導き出し、みんなへはその結論を信じて自分と共に命を懸けるよう望みます。これはたった一人で首謀者に立ち向かった王馬とみんなでモノクマとの最終決戦に臨もうとした百田に対応しており、Aランク同士で方向性に違いはあれども本来は実力や覚悟に差がないことを示しています。


10.王馬の計画

 4章から続く王馬の“首謀者をあぶり出す”計画は、白銀の差し金により失敗となってしまいました。そこで王馬はすぐさま“高みにいるモノクマをゲームの盤面に引き摺り下ろす”計画に切り替えます。二つの計画にはターゲットと目的に違いがあって、“首謀者をあぶり出す”計画は対首謀者用で視聴者からの批判で首謀者の痺れを切れさせることを目的としており、“高みにいるモノクマをゲームの盤面に引き摺り下ろす”計画は対モノクマ用でコロシアイがゲームとして成立していないことを視聴者に見せつけることを目的としています。また、計画の全ては王馬の立案によるものですが、学級裁判のクロ役には王馬本人よりも百田の方が適任です。コロシアイを終わらせるために投票を決行すべきか。それとも、みんなを助けるために計画を中止すべきか。王馬には正しい判断がつきませんが、百田の勘なら確実に正しい答えを選べるからです。そして、百田が投票直前に計画の中止を選んだということは、つまりモノクマが最原の当初の推理通りに百田をクロだと判断したということです。王馬の嘘でモノクマを騙せても、最原の嘘ではモノクマを騙せなかったのでしょう。結果的に王馬はゲームに勝てませんでしたが、決して負けたわけでもありません。百田の言うとおり、王馬の計画のお陰で間違いなく“真の首謀者”の牙城に迫ったからです。王馬の計画が残してくれたものは多いのですが、中でも4章学級裁判で王馬の動機を最原に推理させない手法を用いたことには驚くほど大きな価値があります。


11.白銀のシミュレーション その5

 5章における白銀のシミュレーションは、自らコロシアイに介入しながらも思い通りにはなりません。百田と王馬それぞれの超優秀さとフィクションを越えた想いが、コロシアイを終わらせることに向けられているからです。このコロシアイが終わるか終わらないかのギリギリの攻防は、コロシアイ参加者のフィクションを越えた想いが完全にフィクションに並んだことを表しています。


12.百田解斗 その2


百田解斗


 白銀のシミュレーションでは、春川が王馬を殺害するはずでした。しかし、そうはならず、百田は春川による止めの一撃から王馬をかばいます。百田に「春川を守りたい」というフィクションを越えた想いがあったからです。これまで百田の一番強い想いは「コロシアイを終わらせたい」でした。それが日に日に弱っていく自分を心から案じる春川の暖かさに触れることで、春川への想いがどんどん大きくなっていったのです。孤児院の子供たちが春川の心根の優しさを正しく理解できるように、百田もまた春川の心根の優しさを正しく理解できます。そして、そうした才能だからこそ、春川の告白を受けてすら自分の想いを伝えるわけにはいきませんでした。「春川のためにはならない」という正解が分かってしまうからです。百田は春川のために春川にとって本当に必要な言葉だけを伝えます。一方で最原に対してはつらく当たったことを謝ります。百田にとっては、下げなくてはならない頭を下げたということなのでしょう。おしおき直前の百田のアドバイスと最原の「わかってる」というやり取りの繰り返しは、最原がもはや百田の支えを必要としないほど成長したことを表しています。百田は最後の最後まで助手たちのことを心から思いやり、ボスとしての責任を全うするのでした。


13.王馬小吉 その2


王馬小吉


 百田から「本当に最後の最後まで……あいつは筋金入りの嘘つきだったぜ」と言われる王馬は、これまでの『極限状態での発言に嘘はない』というルールを覆して死の間際まで嘘をついたのだから、確かに筋金入りの嘘つきでした。「首謀者も視聴者も全部ムカつくから、どんな手を使おうと絶対にこのゲームを終わらせてみせるんだ(意訳)」という王馬の最後の言葉は本心ではありません。王馬の一番強い想いは「夢野を守りたい」だからです。動機ビデオの効果に抗えられたのは、一番大切なものが外の世界でなく才囚学園の中にあったから。昆虫でなごもう会の本当の狙いは、自分の動機ビデオを夢野に見せたかったからであり、夢野の動機ビデオを自分が見たかったから。星の動機ビデオは春川が持っていると教えたのも、裁判決着後に春川のヘイトを自分に向けたのも、春川から夢野を守りたかったから。学級裁判で転子の事件に誘導したのも、夢野に手柄を立てさせたのも、裁判決着後に自分につく嘘をやめさせたのも、夢野の今後を案じていたから。“外の世界の真実”を黙っていたのも、夢野を不安にさせたくなかったから。百田に自分を殴らせて不仲を演出したのも、入間から夢野を守りたかったから。入間とゴン太を犠牲にしてまで首謀者を追い詰める計画を立てたのも、クロ不明の犯行計画を練ったのも、クロ役に自分でなく百田を選んだのも、全部が全部夢野のためのものでした。好きになる切っ掛けがあったわけではありません。ただ一目会ったその時から、魔法をかけられたように心を奪われてしまったのです。しかし、性格的に素直に想いを告げられず、さらに夢野の側には男死嫌いの転子がついていて、仲良くするきっかけがなかなかつかめません。しかし、そんな王馬にも可能なアプローチが一つだけありました。それは夢野をこの残酷なコロシアイから守るために、才能の限りを尽くして状況をコントロールすることです。王馬は、好きな人を振り向かせるために、ずっと自分の首を絞め続けていたのです。そんな王馬が最後の言葉に選んだのは、「夢野のためにゲームを終わらせる」という真実でなく「ムカつく相手のためにゲームを終わらせる」という嘘でした。その嘘に対してのみんなの反応は様々でしたが、夢野は「いや…嘘に決まっとるわい。あやつは本気の涙を流すようなヤツではない」と応えます。おそらく王馬は夢野のそうした反応を見越して、あえてああした嘘をついたのでしょう。自分の真実で悲しませることなく、まるで不器用なダンスのように自分の嘘で振り回していたかったのでしょう。


14.おしおきでの百田

 百田はおしおき前に「オマエらの望むとおりには死なねーからな」と宣言し、そのとおりおしおき中に病死します。これは自らの命を犠牲にすることで、狙いどおりに学級裁判でモノクマを騙した王馬に対応しています。どちらも相手に勝ったけど負けた。あるいは、勝てなかったけど負けなかった。そんな局地戦における互角の勝負は、Aランクの百田と王馬がコロシアイに対して命懸けでようやく得られる最大級の戦果なのです。


15.バトンタッチ

 百田が一瞬で最原を信じ、時間の経過と共に春川に惹かれていったのに対して、王馬は一瞬で夢野に心を奪われ、時間をかけて最原を理解していきました。そして、百田と王馬のどちらもがここで好きな相手を守るために命を使えたのは、まだ最原が残っているからです。百田が「終一なら王馬の犯行の全てを解き明かせるはずだ」と信じていたように、王馬もまた「最原ちゃんならオレの犯行の全てを解き明かすだろうね」と理解していたことでしょう。赤松亡き後ここまで表に裏にコロシアイと戦い続けた二人は、命を燃やし尽くして倒れ込みます。「コロシアイを終わらせたい」という想いのバトンをアンカーに託して。


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